ライム病は、マダニに刺されることでボレリア菌という細菌に感染して発症する病気です。
慢性の不調の原因になる「慢性ライム病」と、一般的に知られているライム病とでは、病態も治療アプローチも全く異なります。日本の保険診療や一般的なネット情報で扱われる「ライム病」は、基本的に「急性ライム病」を前提としています。
当院は、慢性の不調の根本原因を治すことを指針とする機能性治療の医療機関です。ライム病については、「慢性ライム病」が不調の原因になることが多く、実際に色々調べてみると慢性ライム病が長年の不調の原因であったことが判明することがあります。慢性ライム病は症状が多岐に渡り、診断が難しく、しかもライム病の菌の特徴のせいで治療は容易ではありません。当院で対応するライム病は難治性の慢性ライム病です。慢性ライム病は主に国際ライム・関連疾患学会(ILADS)のガイドラインに沿った専門的な診療を行っています。
しばしば「ライム病」(急性のライム病を指している)と、複雑な病態の「慢性ライム病」が混同されやすく、患者さまが混乱することがあります。急性ライム病はマダニなどの虫に刺されて数日で皮膚の紅斑、発熱などの症状が起こる感染症で、わかりやすい病態です。著名人たちがライム病であることを公表しているときは急性ライム病ではなく、慢性化したライム病のとこを指しています。ライム病(急性ライム病)と慢性ライム病は異なる病気だと理解するべきです。
1. ライム病の2つの病態
① 急性ライム病(初期感染)
- マダニに刺されてから数日から数週間以内に発症する、初期の感染状態です。
・主な症状:
特徴的な赤い輪状の発疹(遊走性紅斑)、発熱、頭痛、関節痛など、インフルエンザに似た症状が現れます。
・特徴:
発症後早めの適切な抗菌薬(2〜3週間)の投与によって多くは改善します。日本の保険診療が対応するのは、「急性ライム病」です。保険診療におけるライム病の検査法は「急性ライム病」の診断を前提にしたものであり、治療法は「急性ライム病」に準拠した内容である。診断法も治療法もいずれも、病態の異なる「慢性ライム病」においては診断も治療介入による改善も得られません。
② 慢性ライム病(持続感染・再燃)
- 初期治療(急性期の抗菌薬投与)を受けたかどうかにかかわらず、数ヶ月から数年にわたり全身のさまざまな症状が持続・再発する病態。
慢性化したライム病や再燃したライム病をライム病治療後の後遺症症候群(PTLDS)呼ぶこともあります。一時的に症状が軽快したり検査が陰性化したりしても、数ヶ月後に神経症状、関節痛、強い倦怠感が再発・再燃するケースが非常に多く見られます。このような慢性の不調を起こす、持続感染のライム病は「慢性のライム病」です。感染源のみならず、毒性の解毒、免疫低下、自己免疫異常、炎症、神経系の微小炎症、消化機能低下、バリアなどの構造破綻、ミトコンドリア機能不全などを網羅した全身機能を調整し、かつ混合感染する他の病原体も治療計画に組み入れ、慢性全身性炎症病態を治します。
なお。ライム病が診断も難しいし、難治性で闘病期間が長くなりやすいなどと言われたり、著名人がライム病だと公表する際は「慢性ライム病」のことを指しています。
2. 慢性ライム病に対する当院の治療法
当院では、国際ライム・関連疾患学会(ILADS)の見解に基づき、慢性ライム病の背景にある以下の要因を考慮して診療を行います。
- 潜伏・持続感染の存在 ボレリア菌はバイオフィルム(保護膜)を形成したり、休眠状態(persister)となって組織の深部や神経系に潜み、短期の抗菌薬治療や免疫をすり抜けることがあります。抗体検査で「陰性」と出ても、体内に潜伏した菌が数ヶ月〜数年後に再活性化し、症状が再発する場合があります。
- 混合感染(co-infections他の病原体) マダニはボレリア菌だけでなく、エールリキア、バベシアやバルトネラなどの他の病原体(混合感染症)を同時に媒介することが多くあります。これらが未治療のまま残っていると、慢性的な神経症状や倦怠感が引き起こされます。エールリキア、バベシアやバルトネラなどの病原体はそれぞれ特徴があり、感染部位の違いや各免疫細胞への影響も異なり、混合感染は単一感染の場合よりも治療を困難にします。
- 臨床症状や慢性感染による全身機能への影響を踏まえた個別化治療 単なる「感染後の後遺症」として治療をあきらめるのではなく、患者様の再発を繰り返す症状や慢性の経過と、臨床診断を行い、病態に応じた多角的なアプローチを行います。
- 慢性ライム病は300種類以上の症状が起こりうる病気です。診断は容易ではありませんが、ライム病に詳しい医師(LLMD:lyme literate doctor)に相談し、見落としや誤診をなるべく回避することをお勧めします。

3. 原因不明の慢性症状でお悩みの方へ
何カ月、何年も原因不明の不調が続いている」 「各種検査で異常がなく、慢性疲労症候群、うつ病、更年期障害やストレスのせいにされてしまった」。このような症状の場合、慢性ライム病が関与していることがあります。
こうした状況で患者様が相談する存在として、海外では慢性ライム病や関連疾患の病態に精通した、LLMD(ライム病に精通した医師)と呼ばれるが医師がいます。LLMD(ライム病に精通した医師)は慢性ライム病の病態を深く理解し、適切な治療によって改善へ導く知識と臨床スキルを備えた医師のことです。
LLMD(ライム病に精通した医師)は公的な資格名ではありませんが、患者様が真に求めているのは、単なる辛さへの共感や傾聴、寄り添いだけではありません。慢性的な不調の大元にある原因を探し出し、適切な医学的アプローチによって改善・回復へと導くことが何より重要だからです。
ご自身の不調の背景にライム病の可能性を疑われている方、あるいは確実に治していきたいと考えておられる方は、LLMD(ライム病に精通した医師)の専門的なアプローチに治療を委ねることをお勧めいたします。慢性ライム病かどうか疑うだけでも困難を極めることがありますし、全身に及ぶ多彩な症状や機能不全の範囲も広範囲にわたります。ですからLLMD(ライム病に精通した医師)として知見を備えていないと、患者様が本来得られるはずだった回復の機会を逃してしまうことがあります。
4. 当院の診療姿勢
化学物質過敏症様、MCAS、慢性疲労、全身の痛み、SIBO、ブレインフォグといった「原因不明」とされる不調の大元には、これまで見落とされてきた慢性ライム病や複合感染症(バベシア・バルトネラ等)が潜んでいる可能性があります。さらに、ここにカビ(真菌)の感染や慢性的なウイルス感染(EBウイルス等)が重なることで、病態はより複雑化し、捉えどころがなくなってしまうケースも少なくありません。
- 多角的な原因究明 従来の単一検査では捉えきれないボレリア亜種や回帰熱群(B. miyamotoi等)、同時に感染する複合感染症の可能性を排除せず、病態の背景と影響が及んでいるあらゆる機能不全を深く掘り下げます。
- 症状パターンに基づく包括的評価 単一の検査数値だけで安易に否定せず、患者様が辿ってきた詳細な経過や「全身の症状パターン」を精密に分析します。
- 実際の改善を目指す治療の実践 ILADS(国際ライム・関連疾患学会)などの病態理解とガイドラインに基づき、隠れた原因に応じた個別化治療を計画し、症状の改善と生活の質(QOL)の回復を目指します。
長年「原因不明」として放置されてきた不調であっても、まだアプローチできる医療の選択肢が残されていることがあります。一人で悩まず、どうぞ当院にご相談ください。
※ 「慢性のライム病と異なる、急性ライム病について」
日本の行政や公的機関が扱うライム病の基準は、前述の通り「皮膚生検や髄液からの病原体の直接検出、または特定段階での血清抗体」を前提とした急性感染に限られています。
多くのネット情報や国立感染症研究所は、公的な届出基準を満たす「急性ライム病」を前提としています。公的枠組みにおいて急性ライム病の情報が中心となるのは当然のことですが、問題は実際に患者様を長年悩ませている病態の多くが、急性ライム病とは異なるという点です。
原因不明とされる慢性疲労症候群様症状、認知機能低下(ブレインフォグ)、自己免疫異常、全身の激しい痛みなどの慢性的な不調は、単純な急性ライム病の経過では説明がつきません。その背景には、組織潜伏や再燃を伴う「慢性化したライム病」が深く関与しています。
急性ライム病4類感染症における公的届出基準 (慢性ライム病と異なります)
厚生労働省の届出基準では、臨床的特徴(皮膚の紅斑等)に加えて、以下のいずれかの検査方法・採取検体によって病原体または抗体が確認された場合に「急性ライム病」として直ちに届出を行うよう定められています。
| 検査方法 | 届出に必要な採取検体(検査材料) | 判定基準 |
| 病原体の分離・同定 | 紅斑部の皮膚生検組織、髄液(髄膜炎・脳炎の場合) | ボレリア菌の分離 |
| PCR法(遺伝子検出) | 紅斑部の皮膚生検組織、髄液 | ボレリア菌遺伝子(DNA)の検出 |
| ELISA法(抗体検出) | 血清(血液) | ライム病の特異抗体の検出 |
急性ライム病 vs 慢性ライム病 比較
| 項目 | 急性ライム病 | 慢性ライム病 |
| 主な病態 | ボレリア菌の初期感染 | 菌の組織潜伏・持続感染、再活性化、混合感染 |
| 主な症状 | 赤い発疹(典型的な遊走性紅斑)、発熱、頭痛 | 慢性疲労、神経症状、関節痛、ブレインフォグ(数ヶ月内に再燃することがある。また、持続することが多い。) |
| 診断・検査 | 感染症法届出基準に沿った確定診断 ・皮膚生検組織・髄液を用いた菌分離やPCR検査 ・血液の抗体検査 | 多角的・総合的診断 単一検査に縛られず、westernblot検査、ELISA検査、PCR、混合感染(バベシア、バルトネラなど)検査、および臨床症状との総合診断 |
| 主な治療方針 | 抗菌薬の短期投与(2〜3週間) | 患者様の病態に応じた多角的な個別化治療。慢性ライム病に対しては抗菌対策だけを行うのではなく、自己免疫、炎症、解毒機能をも含む、全身機能の網羅的な治療を要します。同時に腸内細菌叢の不均衡(dysbiosis)、真菌やウイルスとの合併にも対応します。 |
| 日本の保険診療 | 対象(届出基準を満たす急性感染) | 対象外(専門的アプローチが必要) |
急性ライム病と慢性ライム病は、単に闘病期間の長さの違いではありません。病態、症状、病原体の感染・潜伏部位のいずれもが全く異なり、当然ながら診断法も治療アプローチも全く異なります。例えば、急性ライム病には抗生物質の2−3週間を処方します。慢性ライム病は抗生物質だけではありません。抗生剤を服用できないほど胃腸が弱っていたり、化学的な薬剤を受け付けない健康状態のこともあれば、よしんば薬を飲めたとしても細胞内やシスト型の病原体に効かないこともあります。慢性ライム病は全人的な治療とライム病以外のリスク因子にも配慮した治療になります。
当院では、公的な急性期の基準と慢性の不調に関連する慢性ライム病の病態の違いをに把握した上で、専門的な診療を行っております。



