
メラトニンは‘’ウェルネス‘’のための最重要物質のひとつです。
単なる睡眠ホルモンにはとどまらないメラトニン
メラトニンは一般には睡眠を促すホルモンと知られていますが、近年の研究により、生体内の最強クラスのアンチエイジング物質でもあることが明らかになってきました。
その他、脳の保護、体型維持、ミトコンドリアサポート、免疫強化、コロナ後遺症(Long COVID)、ブレインフォグ、倦怠感、癌予防など、多彩な作用があります。
特に抜きん出ているのがアンチエイジング作用です。もともとメラトニンは昼間と夜と光の違いを感知して、人間の体内時計として存在してきました。扱い様によっては、人間の生命のリズムを若いままに維持します。それどころか、老化細胞の処理をして、積極的なアンチエイジング効果を発揮します。老化のメカニズムは「老化細胞」が主体だと解明されています。メラトニンは老化細胞が拡散する老化メッセージを消す働きをします。メラトニンは体内の産生物のうち、圧倒的なアンチエイジング作用を持っているということです。
メラトニンはどこで作られているのか?
メラトニンは脳の中心近くの松果体という臓器から分泌されます。
松果体はサイズは大豆1個くらいのサイズで、松ぼっくりのような形をしています。(だから松果体というネーミングです) 眉間の真ん中から脳内に真っ直ぐ進んだ奥(左右の耳を結んだ辺りの奥行き)に松果体が位置します。(脳の図の光った部分。英語で松果体の意味のpineal glandと記しています)


メラトニンの古典的な仕事 昼間と夜のメリハリのリズムを取り、睡眠の質を高める作用が松果体から分泌されるメラトニンの任務です。
体内時計作用 朝の光を浴びてから約15時間後に分泌が高まり、体にそろそろ眠る時間だよ、とサインを送ります。
サードアイ(第3の目) 光を感知して昼夜のリズムをとらえます。額の中心にある見えない目のことですが、トカゲなど一部の動物は第3の目で光を感知します。哺乳類は進化し大脳が大き過ぎたため、第3の目は松果体として脳の奥まったところへ収まったようです。
メラトニンの驚異的な作用
以下はメラトニンの体内時計と睡眠サポート以外の代表的な作用です。実はメラトニンは松果体以外に全身の細胞からも分泌されます。これらがアンチエイジング作用や免疫に関与することが比較的近年知られるようになりました。
1. アンチエイジング作用:老化細胞編
アンチエイジング作用を理解するために2つの用語「老化細胞」と「SASP」を紹介します。
老化は老化細胞が起こす現象です。正常な細胞がダメージを受けると細胞分裂を止め、「老化細胞」と変わり果てます。この老化細胞が周囲に炎症性物質を撒き散らします。老化細胞が撒く炎症性物質は老化のメッセージの発信と同じです。SASP*というのは、老化細胞が老化をまるで伝染病のように周囲に広げていく様子のことです。
*SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype:細胞老化関連分泌現象)
SASPの現象は「まるでゾンビ」、です。老化細胞がゾンビで、ゾンビが周囲の人間を次々にゾンビ化するホラーな状況です。ゾンビから逃げ惑うのではなくて(結局無駄なので)、ゾンビを退治する方法が必要です。ですから近年は、老化細胞を除去したりSASPを止める手法が精力的に研究されています。
老化細胞とSASPにまつわるアンチエイジング用語も紹介いたします。
◎セノリティクス(Senolytics): 老化細胞を除去すること。
◎セノモルフィクス(Senomorphics): SASP(有害な炎症物質の分泌)を抑え込むこと。
メラトニンは優秀なセノモルフィクス(SASP抑制)製剤です。ヒトのホルモンの中で唯一無二のセノモルフィクスです。「メラトニンはセノモルフィクスだ」、「レスベラトロールはセノリティクス」だ、などといった使い方をします。
2. アンチエイジング作用:幹細胞・ミトコンドリア編
近年、再生医療の進歩が目覚ましいところです。実はメラトニンと再生医療は相性が良いのです。
・幹細胞にメッセージを届ける:
メラトニンを浴びた幹細胞は、小さなカプセル状の物質(エクソソーム)を周囲に放出します。
・炎症を抑えて修復を早める:
このカプセル(エクソソーム)の中には、炎症を抑えたり組織を修復したりする成分が詰まっており、傷ついた周囲の組織を速やかに回復させ、体全体の老化を防ぎます。
・幹細胞を保護する:
幹細胞は、傷ついた組織を新しく作り直すための「元となる細胞」です。老化の原因となる酸化や炎症から幹細胞を守り、細胞が途中で死んでしまうのを防ぎ組織を治す能力を保ちます。幹細胞の培養においてメラトニンが幹細胞の増殖や分化をサポートする、幹細胞移植後の幹細胞の生存率を高めて幹細胞保護もします。
・幹細胞の質:
幹細胞の「細胞を複製する能力」や「分化の能力」を維持します。この能力が弱まると加齢や病気が進行します。
・間葉系幹細胞:
骨髄や脂肪などにいる間葉系幹細胞という細胞は、骨や軟骨、神経、脂肪、肝臓などを再生、修復する可能性があります。メラトニンは間葉系幹細胞の行き着く先をコントロールし増殖、分化の能力を引き出します。骨粗鬆症(骨がもろくなる病気)の改善にも役立ちます
・卵子と卵巣を守る作用:
メラトニンは、大気汚染、内分泌撹乱物質、抗がん剤やカビ毒などの卵巣老化リスク因子から卵巣を守ります。卵巣は女性にとって加齢を制御する生物学的な時計といえます。生命のリズムをコントロールする点がメラトニンと共通していて、メラトニンは強力に卵巣をバックアップします。
ミトコンドリアの保護。発電所のダメージを最小限にします。

・幹細胞のエネルギー源であるミトコンドリアを保護して、幹細胞が体内で長く正常に働き続けられる環境を整えます。
・メラトニンはとても小さい分子量で、水と油両方と親和性が高いので、細胞膜やミトコンドリアの膜を容易に通過します。ミトコンドリア内の活性酸素を消してエネルギー産生を助けます。
3. 免疫強化
年を重ねると、ウイルスなどの外敵と戦う免疫力が落ちる一方で、体の中で無駄な炎症が起きやすくなります。炎症を止める力が弱くなり老化炎症(インフラメイジング*)が起きることを免疫老化と呼びます。メラトニンは免疫の衰えを防ぎ、バランスを整えます。また、過剰な免疫応答を抑えつつ、ウイルスやガン細胞に対抗するナチュラルキラー細胞やT細胞作用を最適化する免疫調整役として機能します。抗ガン剤治療の時の副作用軽減にも使われます。また、リーキーブレインの改善や認知症の予防にも適しています。
*インフラメイジング=inflammation炎症とaging老化を組み合わせた用語
4. 代謝
・白色脂肪から茶系の脂肪へ: メラトニンはエネルギー蓄え型の白い脂肪細胞を、エネルギーを燃焼して熱を作る、茶系の脂肪細胞に変化させます。
・茶色の脂肪は悪性腫瘍縮小、代謝促進(太りにくい)、糖尿病や動脈硬化予防、妊孕性向上などさまざまな作用を持ちます。サーカディアンリズムが良好な方、つまり、メラトニンが夜間充分に作用する方は、脂肪がつきにくい体質になります。メラトニンがもたらす良質な睡眠は他の手段による睡眠と格が違います。
5. 脳の保護
脳は最もメラトニンの恩恵を受ける臓器です。メラトニンはミトコンドリアサポートをするので、ミトコンドリアをたくさん持つ脳や神経系にとって強い味方です。
・うつ症状の改善:
大脳辺縁系の炎症を抑え、セロトニンの感度を調節して情緒を安定させます。
・脳の保護とブレインフォグの緩和:
メラトニンは分子量がとても小さく、血液脳関門(BBB)を自由に出入りするレアな抗酸化物質です。脳内の神経炎症を抑える神経保護作用を示します。
・神経毒の解毒:
メラトニンは夜間にグリンファティックシステムという、脳のリンパの流れを支えます。グリンファティックシステムは脳内の毒の排出をする脳特有のシステムです。認知症の原因になる神経毒を脳内から解毒します。脳内の炎症も減らします。
NMN点滴という人気のアンチエイジングメニューがあります。ミトコンドリアのエネルギーを作る最後の電子モーターのコンプレックス1をサポートして、若返り遺伝子サーチュイン1も強化するメカニズムの治療です。即効性があり元気になるという、同時に良質の睡眠を得られる、効果を体感しやすい治療です。NMN点滴には脳のアンチエイジング、認知機能改善作用がありますが、メラトニンを併用するとさらに効果が高まると指摘されています。
6. ホルモンバランス
メラトニンは、ホルモンバランスを整えます。主要なアンチエイジング系のホルモンを助けます。
・甲状腺機能の最適化:
甲状腺ホルモンの働きを助けます。
・DHEAと成長ホルモンのサポート:
メラトニンがノンレム睡眠を深めることで、成長ホルモンの分泌ピークを最大化します。また、副腎由来のDHEAというホルモンの産生も助けます。DHEAと成長ホルモンはアンチエイジング系の同化ホルモンで、加齢とともに分泌量が減ります。但し、DHEAと成長ホルモンは補充の際、ガンリスクの可能性を意識する必要があります。一方、メラトニンは腫瘍形成リスクは全くなく、むしろ癌予防や腫瘍縮小の作用を持ちます。ストレスホルモン(コルチゾール)の過剰な分泌を防ぎます。
・副腎疲労のサポート
7. コロナ後遺症・ブレインフォグ
長引くコロナ後遺症(Long COVID)の病態として、慢性的な全身性炎症、ミトコンドリア機能不全、脳の微小炎症が解明されています。
メラトニンはこれらの病態生理の主要経路に同時にアプローチできるので、近年多くの研究が行われています。
最後に…
昼間私たちはさまざまな用事に忙殺されています。生産性がない夜間でもメラトニンはしっかり働くので、現代人の我々には欠かせません。良質の睡眠、脳内の解毒、全身の若返りと美貌、心臓病、認知症、癌やメタボなどの予防など、メラトニンは主役級に関わります。細胞年齢を若返らせたい人や良質な睡眠を求める人にとって心強いホルモンです。楽して、美貌と若さと健康を維持したい方にとって、メラトニンを生かさない手はありません。
メラトニンを産生する松果体は年々衰えますので、メラトニンをなるべく分泌できるように工夫をしましょう。例えば就寝中寝室は真っ暗にしたり、wifi、ブルーライトなどの電磁波をつけないなどがあります。逆に昼間は日の光を浴びて、夜のためにメラトニン充電をします。フッ素を取りすぎないことも松果体を守ることになりますので、意識すると良いでしょう。天然メラトニンを製剤として摂取することも可能です。メラトニンの補充療法ということになるのですが、良質な製剤を選ぶ必要があります。メラトニンは国によっては規制がない普通のサプリメントとして売られていることもあり、品質に大きなばらつきがあります(メラトニンあるあるです。)
メラトニン補充で全て解決なのか?リスクは?松果体を若返らせては?結局睡眠が大事ならなぜ睡眠薬で代用しないのか?色々気になることが出てきますね。次回はメラトニンをどうやって増やすかというテーマにまつわる話題にしましょう。
今回は、メラトニンはアンチエイジングや脳を助ける多才なホルモン、というお話でした。
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