ライム病の仲間、エーリキア症

白血球(単球)内で増殖するエーリキア菌の塊の血液塗抹標本 出典CDC

ライム病の仲間、エーリキア症

エーリキア感染症は、エーリキアという名の細菌が引き起こす病気です。エーリキア菌はライム病と同じ、ダニが媒介してヒトに移り、白血球に入ります。ヒトの白血球に感染する点がエールリヒア症の最大の特徴です。

知名度について

エーリキア感染症はあまり知られていません。ライム病と混合感染しやすく、その際ライム病の病状を悪化させたり治療の妨害をします。スポットライトを浴びるライム病の陰に隠れ、バベシア症やバルトネラ症の知名度に及ばない地味な存在です。ダニ媒介性の感染症のなかは注目度が低く、慢性不調の元凶としての疑惑かけられ度が極めて低い感染症です。

エーリキア菌は節足動物が媒介してヒトに侵入します。そして人の体の白血球に感染します。白血球は免疫担当細胞です。エーリキア菌に持続感染していると免疫が弱くなりさまざまな症状を長引かせます。

今回は知名度は低いけれども、よくある感染症のエーリキア症を紹介いたします。

エーリキア感染症の症状

エーリキア感染症の症状は、風邪のような軽いものから、重篤なものまでさまざまです。主な症状には以下のようなものがあります。ダニなどの節足動物との接触後1,2週間後に発熱して発症することが多いです。

  • 発熱:説明のつかない発熱が突然起こることがあります。
  • 疲労 常に疲れやすくなります。
  • 頭痛:慢性の頭痛、頭痛持ちになります。
  • 筋肉痛:インフルエンザ様の筋肉痛が起こることがあります。
  • 体重減少
  • 重症例:元々免疫不全がある方や小さな子供や高齢者の場合、エーリキア菌にかかると腎不全、藩種性血管内凝固症候群(DIC)、髄膜炎、急性呼吸促迫症候群に進行することがあります。

診断法

エーリキア感染症を診断するためには、血液検査や尿検査など行います。エーリキア菌の診断にはPCR検査がより正確です。PCR検査はコロナの検査という意味ではなく、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)」といい、生物の遺伝情報をもつDNAを複製して増幅させる方法です。

しかし、まず疑うところからして難しいので診断が遅れがちです。白血球をハイジャックされてしまうので、早期発見に努めるべきところが早期の治療が難しい病気です。症状が他の病気と似ているため、誤診されたままのエーリキア症がよくあります。診断がつかないままステロイドなどの免疫抑制剤を投与されるとエーリキア症が悪化することがあります。真菌感染やライム病との混合感染があったり、免疫低下の基礎疾患がある方、化学療法や放射線治療中の方は重篤化しやすいです。意識障害、倦怠感や慢性頭痛などが続くことがあります。柔軟な発想、正確な診断、適切な治療が鉄則です。

治療困難な理由

エーリキア感染症の治療は教科書では抗生物質内服という教えになっています。しかし実際は他の菌との混合感染があったり、免疫低下が絡み、エーリキア菌の治療は容易ではありません。

  1. 免疫回避のメカニズム
    エーリキア細菌は、白血球という免疫細胞の中に侵入して生き延びます。白血球内に隠れるおかげで、身体の免疫システムから攻撃されなくなります。白血球感染はエーリキア最強の生存法です。エーリキア菌は白血球の中の単球に狙いを定めます。単球はマクロファージや樹状細胞に分化する免疫系の細胞です。

  2. 抗生物質の限界
    エーリキア感染症の治療には抗生物質が使われます。免疫担当細胞のサポートがない隙に抗生物質に対して変異を起こし、耐性を作ります。

  3. 症状の多様性
    症状が非特異的でわかりにくいです。エーリキア症の症状は他の病気と似ている上に知名度がありません。例えば、発熱や筋肉痛、倦怠感などは風邪やインフルエンザと似ています。慢性疲労で医療機関を訪ねてもエーリキア菌はルーチンの検査に含まれません。また、軽い症状のこともあれば重篤な状態もあります。慢性化して平熱になると感染症すら疑われなくなり、一層エーリキアやライム病からも医師のベクトルが離れていきます。そして診断が遅れ、その結果治療が遅れ、病気が長引きます。

  4. 混合感染の影響
    エールリヒア症の治療が難しいもう一つの要因は、混合感染です。たとえば、バベシア症とエーリキア症が同時に存在する場合、赤血球と白血球がそれぞれ異なる病原体に占領され、免疫系の防御が著しく低下します。これにより、病態がさらに複雑化し、治療期間が延びる可能性があります。

バルトネラやライム病が加わると、白血球、赤血球、さらには血管内皮細胞やリンパ系までが影響を受け、細胞内外と血管壁をもバイオフィルムのネバネバが覆い尽くし、エーリキア症の治療は非常に困難となります。

エーリキア症の治療法

エーリキア感染症の治療ではドキシサイクリン、リファンピシンなどの抗生物質を使います。けれども菌は白血球内に入り込んでおり、白血球の作用を弱めています。白血球のサポートなしで抗生物質は必ずしも効きません。混合感染では、抗生物質だけでは対応しきれないため、複数の治療法を組み合わせる必要があります。最強の組み合わせ、ライム病+バベシア症+バルトネラ症+エールリヒア症+真菌の混合感染の場合は、場当たり的な抗生剤治療や栄養サプリや睡眠確保だけでは治りません。

一時的な効果が見られても症状が再発したり、感染が長引くことがあります。白血球に頼らない他の免疫機能を強化する必要があります。

免疫サポートと自然療法

エーリキア症においては免疫システムが重要な役割を果たします。

・オゾン自己血療法 免疫調整や抗炎症作用を期待できる治療法です。血液中の酸素濃度を高め、菌毒素の分解、代謝を促します。

・胸腺ペプチド 胸腺が免疫細胞を生成する機能をサポートし、免疫応答を改善します。特に、エーリキアのような免疫を回避する病原体に対する防御を強化します。

・副腎サポート 副腎疲労が疑われる場合には、DHEAなどの天然ホルモン補充を検討します。ホルモンは広範囲で甲状腺、松果体、その他の性腺ホルモン、下垂体ホルモンの機能もモニターし、弱い部分を調整します。

・メラトニン 松果体ホルモンであるメラトニンは抗炎症作用があり、免疫機能をサポートすることで、エーリキアのような慢性感染症の治癒を促します。

・プロバイオティクス:腸内のマイクロバイオームを整えて腸内免疫を改善します。

・LDN低容量ナルトレキソン: 免疫調節効果を持つ治療法で、通常は高用量で使われるオピオイド拮抗薬ナルトレキソンを低用量で使用します。メカニズムは、オピオイド受容体の一部分だけに結合することで、直後にエンドルフィンの増加を促進します。これにより、免疫反応を強化し、過剰な炎症反します。

・レクチンフリー食事法(レクチンを多く含む食材を減らす食事法のことです): エーリキア感染症の治療には、食事療法も有効です。レクチンは腸壁にダメージを与え、腸漏れ症候群(リーキーガット)を引き起こす可能性があります。これにより、腸内の異物が血流に入り、慢性的な炎症や免疫反応が起こります。レクチンを減らすことで、腸のバリア機能が改善され、炎症が抑制されます。レクチンフリー食は腸内環境のバランスを整えるので、免疫系を強化します。

まとめ

エーリキア感染症は、免疫回避のメカニズムや抗生物質耐性などの理由で他の基礎疾患がある場合は特に治療の難易度が高くなる病気です。

白血球が感染されるという特徴から、標準的な治療では限界があり、複合的なアプローチが必要です。免疫機能をサポートする治療法や代替療法を組み合わせることで回復を促進できます。免疫サポートや補完的な治療を駆使して乗り切りましょう。

参考文献

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CDC MMWR May 13, 2016

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