住居のカビについて、患者さんのご家族からのよくある質問 Q&A

真菌・かび感染・イーストコネクション

患者さんの不調がカビに関連していると診断された場合、ペット含め、同居人全員に影響が及んでいます。カビ治療においては、家の中のカビを減らしたり、空気の質を変えたり、断捨離や大掃除も含め、さまざまな環境や生活習慣の改善が必要です。これらの作業は家族全員のライフスタイルや所有物に関わってくることです。ご家族の協力も必要になりますので、今回はよく聞かれる質問を紹介いたします。

Q「カビって外にもあるし、普通のことじゃないんですか?」
Answer

確かにカビの胞子はどこにでもあります。外にもあるし、家の中でも空気中に存在します。けれども室内のカビ繁殖は異常なことです。水害や湿気がきっかけになり、カビが室内で異常増殖します。他にも紫外線量や換気や温度などもカビ繁殖を左右します。この室内の大量のカビを放置すると空気の質が悪化します。

湿気の多い環境で室内にカビが生えると、mVOCs(カビ臭く感じる揮発性有機化合物)やマイコトキシン、カビの老廃物、カビの菌のかけらや断片、細菌、水銀などを含む粉塵、ほこりなどのさまざまな汚染物質が発生します。これらのすべてが空気に混ざるので、呼吸の時に無意識に吸ってしまいます。すると、それぞれ有害な物質が口や鼻に入り、脳と気管支と腸の3ルートを通って人間の身体に侵入していきます。すると鼻炎や咳などの説明しやすい症状だけでなく、慢性化すると物忘れ、ブレインフォグ、疲労、不眠、消化不良、お腹の張りなど一見空気の質と関係がなさそうな症状まで引き起こします。腎障害、肝障害、神経変性疾患やがん発症リスクも高くなります。

水関連トラブルは放置せず、過去の住人の水害歴、半地下や低層階の水はけの悪い部屋の管理、空調設備の定期的な洗浄、結露、必ず見直しと修復が必要です。カーペット、マットレス、枕、ソファ、クッション、ぬいぐるみなども中がかびやすいです。歩いたり、座ったり、触ったり、寝返りを打つ度にカビの胞子が舞い上がり、ふわふわ落ちてきたところをまた人間が吸い込みます。住居内のカビは自分がカビの攪拌係になってしまうのです。室内のカビは住人の健康を脅かします。カビの繁殖は屋外と屋内では意味が全く異なります。家のカビは‘’普通のこと‘’ではなく、害悪です。

慢性疲労症候群

Q「もしカビが問題なら、家族全員が病気になるんじゃないですか?」
Answer

これはよくある質問のひとつです。クリニックに質問せずとも、家で患者さんが1人だけ責められることもあるようです。たとえば家族全員がコロナ感染と判明しても、一人だけ重い症状になって、別の人は無症状に近いということがあるように、免疫システムの反応は個人差があります。カビに対する反応も人それぞれで、まったく症状が出ない人から、頭痛、アトピー性湿疹、またはアレルギー性鼻炎、喘息性気管支炎、ADHD、電磁波過敏症、SIBO(小腸細菌異常増殖症)、IgA腎症、化学物質過敏症といった病気まで症状の種類も程度もさまざまです。また、インフルエンザやコロナとは違い、カビへの暴露は家庭内で持続的に続くため、症状が長期間になります。

水回りカビ_ウェルネスクリニック神楽坂

Q「カビキラーのようなカビ用洗剤を使えばカビ問題は解決しますよね?」
Answer

残念ながら、そう簡単ではありません。カビは死んでいるか生きているかに関わらず、問題を引き起こします。多くのカビ関連汚染物質(mVOCs、真菌片、マイコトキシン)は、そもそも生物ではないため、殺すことができません。カビを殺しても汚染物質が除去されるわけではありません。むしろ化学物質による汚染が助長されてしまうこともあります。カビや関連する汚染物質は、小さな粒子にも対応できる安全な掃除方法で物理的に除去する必要があります。これは細心の注意を要するので専門の見地のある業者に依頼するのがよいでしょう。

よくある残念な例としては、このカビ毒処理のプロセスを自分で手がけようとして時間と労力と健康を失ってしまうことです。カビが不調の元凶だと判明するまですでに時間が経過していて健康をむしまばれているので免疫が低下しています。体に鞭打って気力で掃除をしようとしても、掃除や片付けの際は否応なしにカビ胞子に暴露してしまいます。さらに有害物質を追加で浴びてしまうことになり、作業のせいで体調を一層崩してしまうでしょう。

Q「カビは見えないし、何が悪いんだ、治療の必要があるんですか?」
Answer

カビは壁の中、たたみやカーペットの下、家具の中、押し入れ、クローゼット、家具のあまり掃除をしない面、書物、古いアルバム、額縁の裏、下駄箱、植木鉢、空調システムの内部、天井裏、地下室などに隠れていることがあります。これらが空気の流れや圧力の変化、空調の使用法、夏場の窓開放の勘違い、閉めっぱなしのカーテン、寝具の扱い方、ペット共生、人や物の動きなどのさまざまな要因が重なり、カビが居住空間の空気に混ざります。

このように、カビの影響は見えないところにも潜んでいることが多いです。ですから住居のカビは適切な対応をとることが大切です。家の整理(断捨離もあり)、掃除、調湿と来て住環境を整えたら、次に体内に侵入させてしまったカビ退治をします。そのカビが体内でまき散らしたカビ毒(マイコトキシン)や老廃物の処理もします。そして、炎症が持続したせいで損傷した細胞とミトコンドリアを修復します。長期にわたるカビ暴露があった場合はカビ毒の放出量も相当なものです。カビ由来の炎症性の有害物質が血液をめぐり、血の流れが悪くなります。人によっては血小板が集まりやすくなり血行が悪くなることがあります。(健康診断で血小板の値が高いとき、何らかの慢性感染症の菌毒素や重金属などの毒素が多いためということがよくあります。)現時点で体調不良の訴えがない方でも、呼吸しながら日々カビを吸い込んでいます。脳の炎症が静かに進み、将来の認知機能に影響を与えるかもしれません。カビ毒はアルツハイマー病発症のメジャーなリスク因子なのです。

住居の空気質を改善することは家族全員(ペットも)にとって重要です。体内のカビ菌殺菌とカビの毒素排出も行い、炎症を起こしている内臓や細胞を修復するという流れで健康を取り戻しましょう。

参考文献

Anna Maria Marcelloni, Daniela Pigini, Alessandra Chiominto, Angela Gioffrè, Emilia Paba, Exposure to airborne mycotoxins: the riskiest working environments and tasks, Annals of Work Exposures and Health, Volume 68, Issue 1, January 2024, Pages 19–35, (空気中のカビ毒曝露による健康被害。特定の職場環境のデータもまとめてある論文)
Bredesen DE. Inhalational Alzheimer’s disease: an unrecognized – and treatable – epidemic. Aging (Albany NY). 2016 Feb;8(2):304-13. (吸入性アルツハイマーの最大の原因因子、カビ毒について)
Al Hallak M, Verdier T, Bertron A, Roques C, Bailly JD. Fungal Contamination of Building Materials and the Aerosolization of Particles and Toxins in Indoor Air and Their Associated Risks to Health: A Review. Toxins (Basel). 2023 Feb 25;15(3):175. (建材のカビ汚染と室内空気中のエアロゾル化した粒子とカビ毒による健康リスクについて述べた論文)
Ehsanifar M, Rajati R, Gholami A, Reiss JP. Mold and Mycotoxin Exposure and Brain Disorders. J Integr Neurosci. 2023 Oct 17;22(6):137.

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