
イーストコネクションとは、カンジダ感染が全身の不調に関連している状態のことです。不調の例としては、慢性疲労、胃腸の不快感、膨満感、腹痛、慢性の頭痛、うつ症状、物忘れ、不眠、ADHD、アトピー性皮膚炎、セリアック病、関節痛、甲状腺異常、過敏症、アレルギー、自己免疫疾患などがあります。
「イーストコネクション」は、カンジダ感染と慢性の不調の関連に気づいた米国の医師Dr William Crookが提唱した概念です。Crook医師は2002年に他界する直前までカンジダ感染の重要性をさまざまなメディアを通して説きました。当初は同業者の理解が追いつかなかったこともありましたが、現在は根本治療の世界では、カンジダやカビ感染の重要性は広く知られるようになりました。
例えば、全身のホルモン、脳と神経、ミトコンドリアの機能、消化機能、解毒機能、免疫、抗炎症の機能に影響を及ぼし、各機能間の相関性にも影響を与えます。最近では、コロナ後遺症にも影響を及ぼします。化学物質過敏症やMCAS(マスト細胞活性化症候群)のような過敏症の方にもカンジダが関わることがあります。SIBO(小腸最近異常増殖症)や水銀などの慢性有害金属中毒においても同様です。
今日は、イーストコネクションを克服する方法を考えてみましょう。イーストコネクションとは、慢性のカンジダ感染です。一過性の婦人科のカンジダ性膣炎を指すのではなく、主にお腹の中の感染です。
カンジダ菌が体内で異常繁殖していると判明した時にやるべきこと、3つの流れです。
- カンジダ菌に養分を与えないように食事法を見直します。
- 同時に体内にカンジダ菌が育ちにくいように腸内環境を整えます。
- カンジダを退治する薬、抗真菌剤を服用します。
一つずつ見ていきましょう。①の前にまずは自分の不調はイーストコネクションだ、という根拠、客観的なデータが必要です。イーストコネクションの症状、食後お腹が張るとか、眠くなる、過敏症だから、だけでは決め手になりません。
検査データを活用して、どの程度の感染量?、カンジダ菌感染?、他の病原体の感染は?、リーキーガットは?腸内環境は?確認してから前に進みましょう。
イーストコネクションと食事の関係:なぜ避けるべき食材があるのか
イーストコネクションとは、体内のカビ(特にカンジダ)腸や全身の炎症・免疫異常を悪化させる状態を指します。この状態では、腸内環境や免疫のバランスが崩れ、慢性的な疲労、消化不良、皮膚症状、さらには自律神経の不調までさまざまな症状が現れることがあります。
この治療中に重要なのが食事です。ひと言で言うなれば、カビに養分を与えるのをやめることです。イーストコネクションのための食事ですね。
イーストコネクションのための食事
イーストコネクションの治療中は以下の食材を避けましょう。
- ヒスタミンを多く含む食品:加工食品、サラミ、ワイン、チーズ、漬物など
- 糖質全般(砂糖、人工甘味料、果糖(フルーツ、新鮮な果物、フルーツジュース、ドライフルーツも)、果糖ブドウ糖液糖、天然の甘味料、メープルシロップ、コーンシロップ、ココナッツシュガーなど)
- 小麦(パン、パスタ、麺類など)
- 乳製品(チーズ、ヨーグルト) 発酵食品(納豆、味噌、チーズ、パン酵母、ビール、ワイン、シャンパン)
- デンプンの多い食品(じゃがいもなど)
- トランス脂肪酸(ショートニングや高温調理した油)
- 遅延性食物アレルギーの食材全て
これらは「カビのえさ」になるか、腸の粘膜に炎症を起こすので、除去が基本です。上記リストの最後の遅延性食物アレルギーについても見てみましょう。
遅延性食物アレルギー
遅延性食物アレルギーとは、自分の消化機能が食べ物と認識しないものです。これは、食べた直後に症状が出る即時型アレルギー(IgE型)と違い、数時間から数日後に症状が起こります。時間差があるため遅延性食物アレルギーは、大抵自分では気づきにくいものです。一応食べてもいきなりじん麻疹や息苦しいなどという症状が起こらず、その食材を飲み込むことはできます。しかし徐々に体に炎症を与えて、持続、繰り返すことによって腸内環境の乱れ、腸管粘膜の損傷や炎症、消化機能の劣化などが起こります。
遅延性食物アレルギーのメカニズム
- 消化されないため未消化食材が腸まで届く
- 腸粘膜のバリアを物理的に破壊
未消化の大きな塊の食材は腸の壁の表面、粘膜を傷つけ、いわゆるリーキーガット(腸漏れ)の状態を作ります。 - 免疫応答の慢性化
破壊された粘膜から異物が血液中に入り込み、免疫システムはこれを敵と認識。繰り返し摂取されることでIgG型の免疫抗体が作られ、全身に炎症が広がります。 - カビやカンジダのエサになる
未消化の糖質やタンパク質は、腸内でカンジダやカビの養分になります。つまり、遅延性食物アレルギーは全身に広がる炎症だけでなく、カビの増殖環境も作ってしまうのです。カンジダ感染と遅延性食事アレルギーは密接な関係があるということです。
代替食
「じゃあ何を食べればいいの?食べるものがない。」と心配になる方もいるかもしれません。しかし、今まで食べていたものは、体内のカビに養分を与えていたのです。カビが体内でぬくぬく育つと、あなたは体力を奪われ、集中力も奪われてしまってきたのです。体内に異常に増えてしまったカビを減らしたいならば、そのカビの養分を断ちましょう。イーストコネクションの食事法はカビ克服のための大きな前進です。「イーストコネクションの食事法」は、単なる食事制限ではありません。腸の本来の機能を取り戻し、炎症を鎮めて、免疫を高めるという、カンジダ菌増殖がしにくくなる外堀を埋めるアプローチです。
カビが好む食材、消化しにくい食材、遅延型食物アレルギーの食材を避ける一方で、消化しやすい食材、良質の油、消化しやすい良質のタンパク質、食物繊維を充分に摂りましょう。炭水化物をゼロにする必要はありません。ご飯とおかず、のように、定食風にお米を摂りましょう。
・カビ毒は腸と脳のバリアを壊し、免疫細胞を働かなくさせ、全身に炎症を広げます。
・その人の体は「多種の病原体の受け皿」となり、慢性疲労、過敏症、自己免疫異常、癌、ホルモン異常、認知症発症のリスクが上がります。
積極的に摂る食材
イーストコネクションの治療にあたり、万人に適した食事メニューはありません。カンジダがあれば免疫の異常が起こっていて、腸の粘膜のダメージもあり、カンジダ菌以外の感染症も、消化機能も人それぞれ、個別に対応が必要です。ここでは多くの方が取り入れるとよい、最大公約数的な内容をリストアップしました。
- オメガ3系不飽和脂肪酸(亜麻仁油、エゴマ、魚、ラム肉など)
- オメガ6系不飽和脂肪酸(ごま油、グレープシードオイル、アーモンドなど)
- オメガ7系不飽和脂肪酸(アボカド、マカデミアナッツなど)
- オメガ9系脂肪酸(オリーブオイル、ピーカンナッツなど)
- ココナッツオイルやMCTオイル
- 野菜
- 消化しやすい良質なたんぱく質
オイル状のものはコールドプレスドの製品にして、溶剤不使用のオイルを選びます。容器はガラスの遮光瓶がよいでしょう。ごま油やグレープシードオイル以外の不飽和脂肪酸は高温調理に向きません。イーストコネクション治療中はオイルを充分に摂りましょう。オイルは、細胞膜の構成成分です。細胞膜に健康な油を届け、油部分の成分を入れ替えることによって、細胞の新陳代謝が上がります。カビによって損傷を受けた細胞が修復しやすくなります。カビが産生したカビ毒の排出も促されます。
まとめ
イーストコネクションの食事法はカビの養分を断つことが基本です。
同時に
・腸のバリアを修復することと、
・腸の炎症を和らげることに配慮します。
カビの栄養源である糖質や発酵食品の制限をします。さらに遅延性食物アレルギーの除去もします。なぜなら、これらが未消化のまま腸に届くと、腸の炎症とカビ増殖の両方が起こるからです。
食事療法はゴールではなく、治療を支える「土台」です。腸のバリアが整えば、免疫は本来の力を取り戻し、カビやカンジダに傾いていた身体のバランスは少しずつ回復していきます。自己流ではなかなか成功しにくいものです。
以下は、当院で行なっている、イーストコネクション治療です。
医学の見地から、食事法、腸の4R(除去・補充・修復・リバランス)といったアプローチを組み合わせ、腸の機能を改善します。次のステップは体内のカビ菌の除菌です。そしてカビ毒の解毒やカビのバイオフィルムの除去で仕上げをします。腸の修復とカビ毒の解毒には時間がかかりますが、抗真菌剤、抗炎症療法、PKプロトコール(カビ毒を解毒するための細胞膜置換治療)などを駆使します。
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カンジダ感染が遅延型食物アレルギーと即時型食物アレルギーを惹起するという結論。後者のメカニズムはマスト細胞を刺激し脱顆粒が起こると説明しています。つまりカンジダ感染があるとMCASが起こりやすいということです。20年前の文献なのでMCASという用語を使わずに現象を説明しています。
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