- リーキーガット
- SIBO 小腸細菌異常増殖症
- SIFO 小腸真菌異常増殖症
- 腸内腐敗
- 4R治療
- リーキーブレイン
リーキーガット
リーキーガットはleaky gutのカタカナ表記です。腸管がバリア機能が弱くなり、腸がもれもれになっている腸管透過性亢進の状態を総称した腸管漏洩症候群のことです。
腸は食べ物からの栄養素を吸収する場です。腸の表面は非常に細かいヒダがあり細かく波打っているつくりになっています。細かいヒダのおかげで平面よりもはるかに表面積が大きくなり、ヒダを平坦に広げるとしたらテニスコート一面くらいほどの大きさにもなります。食事からの栄養素をわたしたちはテニスコート一面分もの広さの腸の粘膜から効率よく吸収する仕組みがあるのです。
栄養素を腸から吸収する方法については、腸の壁に特殊な自動扉のような門があります。からだに取り入れたい栄養素に対してだけ開く扉です。栄養素が体側に吸収された後はまた自動的に門が閉まります。からだに有害なもの、不要なものは遮断する選択的な門です。有害物質やバイ菌、ウイルスなどの病原体がからだに侵入したくても、この腸の壁に存在する特殊な門が開いてくれないので、排泄されたり代謝されてからだの外に出て行きます。この便利な自動開閉可能な門のことをtight junction (タイトジャンクション)といいます。
ところが、もしも長期間腸に負担をかけたり、腸の慢性的な病気をわずらうと、腸壁に存在する自動扉ごと破壊されてしまいます。扉どころか、その一帯の構造が壊滅状態なので、有害物質や感染源や未消化の食品まで通常は通り抜けることができなかった大きな物体まで体内に侵入できてしまいます。
このような腸壁の構造がこわれた状態をリーキーガットといいます。 未消化の食品でも毒でもなんでも腸から体内の深部へ侵入して血液循環のながれに乗って全身をかけめぐることができてしまうのが、リーキーガットの行く末です。
血液は全身に流れているので、リーキーガットは腸と物理的に離れた場所の不調や腸と関係なさそうな症状も引き起こします。たとえば顔のニキビや、うつ症状や疲労感です。
リーキーガットを疑う8のサイン
自分がリーキーガットかどうか疑う方法があります。 下記簡略化しましたので参考になさってください。 当てはまるものが多いほどリーキーガットの可能性があります。
- お腹の症状
(下痢、膨満感、胃もたれ、便秘、腹痛、過敏性腸症候群、口臭、口内炎) - アレルギー
フードアレルギー、乳糖不耐症、セリアック病、花粉症、喘息) - 脳の症状
(頭痛、ものわすれ、頭重感、情緒不安、不眠、ADHD) - 皮膚のトラブル
(にきび、アトピー、じんましん、赤ら顔、慢性のかゆみなど) - 月経異常
(月経不順、月経痛、PMS、PCOS、子宮内膜症) - 自己免疫疾患
(橋本病、甲状腺機能異常、リウマチ、ループス、クローン病、強皮症、皮膚筋炎、乾癬など) - 慢性疲労、副腎疲労
- むくみ
(顔、フェイスライン、下半身)
なぜリーキーガットになるのか?
リーキーガットには対症療法ではなく原因治療を!
リーキーガットは必ず原因があって発症します。一度だけの出来事がきっかけでリーキーガットになることはありません。
腸にダメージを与える因子がくすぶったり繰り返されたなか、腸の機能が弱っているところに、何らかのきっかけでリーキーガットを発症する流れが主です。または、腸にダメージを与えるような食行動が長年続き、ついに腸の構造が破壊される、限界に達してしまった状態ともいえるでしょう。
リーキーガットの治療法には、パッケージ化した治療はありません。後に述べるような、4R治療という枠組みを利用し、1に原因2に原因と、リーキーガットを引き起こすに至った原因をひたすら治すことにつきます。
ひとりひとりのライフスタイル、病歴、投薬歴、環境、発症の時期など千差万別ですので、個別に原因を追究します。食生活、過去の治療歴、投薬歴、有害物質への暴露が関与します。人生のなかで、自分の腸がどんな物質に触れてきたか、がリーキーガットの発症を決定するのです。
古来から食べ物はからだの一部、医食同源、’You are what you eat’といわれてきました。しかし、現代人は日常的に、残留農薬、環境ホルモン、遺伝子組み換え食品、食肉に残留した抗生物質や、さまざまな添加物、香料、甘味料、マイクロプラスチックなどの不要で害悪でしかない物質まで食べています。腸壁が最初に砦となって、のみこんでしまった有害物質をわたしたちのからだに入れさせまいと頑張ってくれてはいます。
しかし中には腸がすでに悲鳴をあげて腸壁に炎症が起きている方がいます。残念ながらほとんどの方は気づいていません。
胃腸の具合が悪い人は、制酸剤や胃粘膜保護剤などの胃薬を飲んだり、胃もたれはするものだと慣れてしまったり、いざ検査に臨んでも胃カメラや大腸ファイバーで異常なしと言われることもあるからです。(リーキーガットはミクロの世界です。目視では確認できません)実際は、腸壁に炎症が起こり、腸内免疫がからんだ遅延型食事アレルギーの数は年々増えています。
腸の慢性炎症、遅延型アレルギー、腸内腐敗が起こっていると、腸壁はぼろぼろです。毒や病原体や消化されてない食品ばかり我先にからだのなかに入ってきます。 腸がリーキーガットの状態の場合、食べたものを消化して吸収する力に欠けています。異物である食品がからだのなかに取り込まれるたび、つまり腸に届くたびに、リーキーガットの腸には負担になるのです。
腸では処理しきれない食べ物が炎症を起こします。リーキーガットの腸の構造では、その炎症性物質が体内に入りやすくなります。また、消化しきれてない食品ももろくなった構造の腸壁から体内に入ります。
リーキーガットを治さないまま、食べ物について議論するのは非効率です。せっかくのからだによさそうな食品も体の一部にならないどころか、逆に炎症のスイッチを押してしまうことになるのです。
食事は健康の基本です。ウェルネスクリニック神楽坂では、医食同源の本質に迫り、リーキーガットを改善します。
食べ物を選ぶところがゴールになるのではなく、食物がどんな種子から、どのような収穫をされ、どれほどの距離を移動し、店頭でどんな状態で売られているか、調理法は、食べ方は、時間帯は、口に入れるまでも考えます。
そして、食べ物が消化されてからだに吸収されて、栄養素が全身の細胞に行き届いているか、エネルギー産生の源である、ミトコンドリアという分子レベルの代謝に配慮します。「食べながら健康になる」ことを可能にするために順序立てて治療計画を立てます。
リーキーガットとは、本来からだを守るために存在する腸壁が長い年月をかけてダメージを受けてきた結果、起こった状態です。
複雑な病因や、病態を悪化させた別の因子や、かくれた大元の原因や、時間軸との絡みと、個人の体質すべて考慮しながら治療するのが理にかなっていると思いませんか。
SIBO
SIBOとは small intestine bacterial overgrowthの略で、小腸細菌異常増殖症です。
小腸はもともと腸内細菌が少ないところです。胃から離れるにつれ腸内細菌量が増えますので、大腸内が最も腸内細菌が多いです。 本来の小腸内の腸内細菌叢が異常になると、腹部膨満感や腹痛、下痢便秘、異常なガス発生などが起こります。小腸は胃カメラが届きにくいので、SIBOは診断がつけにくく、過敏性腸症候群と間違えられることもあります。
SIBO発症の主な原因は消化管が動きにくいこと、また消化力が弱い、または消化しにくい食品摂取です。
以下のようなリスク因子や基礎疾患があるとSIBOになりやすい、もしくは、すでにSIBOです。 該当するものがありますか?
- 胃酸を抑える薬を飲んでいる。例:タケプロン®️、 ガスター®️
- ステロイド、抗生物質、ピルいずれかを長期間飲んだことがある。
- 遅延型フードアレルギー(遅延型食事アレルギー)がある。
- 食事アレルギーがある、とくにヒスタミンが多い食品。
- 小麦をよく摂る。
- リーキーガットがある。
- 過敏性腸症候群がある。または疑い。
- 酒さ、赤ら顔、アトピー、慢性じんましん。
- 慢性疲労症候群、線維筋痛症
- 糖尿病
- 皮膚筋炎
- クローン病、潰瘍性大腸炎
- 大腸憩室
- 橋本病、甲状腺機能低下症、そのほかの自己免疫疾患
- パーキンソン病
- うつ病
- 不眠症
SIFO
ウェルネスクリニック神楽坂では、SIBOと名前が似た、SIFOの診断と治療も行います。SIFOは小腸内にカビの菌(カンジダ菌)が異常増殖した病的な状態です。 small intestine fungal overgrowthを略してSIFO、訳すと小腸真菌異常増殖症です。
下痢、便秘、腹痛、腹部膨満感、食後の眠気、胃もたれなど様々な胃腸の症状が起こります。SIBO(小腸細菌異常増殖症)、IBS(過敏性腸症候群)、dysbiosis(腸内細菌叢のバランスが崩れた状態、腸内腐敗)、IBD(炎症性腸疾患)、機能性ディスペプシア(胃カメラでは異常が見つからない機能的な消化不良)に合併していることがあります。
消化器以外にも全身の不調に関係することも多いことが特徴です。
慢性疲労、めまい、頭痛、不眠、アレルギー、じんましん、自己免疫疾患、甲状腺機能低下症などが一例です。
腸内腐敗
腸内腐敗は主に大腸内の問題を指します。 大腸内には100兆個近くの腸内細菌が存在しています。善玉菌と悪玉菌とが一定のバランスを保って腸内細菌叢を構成します。
バランスのとれた腸内細菌叢のおかげで、腸内では消化機能を助けたり、腸内免疫を維持しているのですが、絶妙なバランスが崩れ悪玉菌が優勢になってしまい腸内に文字通り腐ったガスが大量に発生した状態が「腸内腐敗」です。
腸内腐敗に陥る原因は上記のSIBOのリスク因子と同じです。さらにいくつかのリスク因子があります。
- 暴飲暴食
- 抗生物質の摂りすぎ
- 抗生物質使用の食肉の食べ過ぎ
- 痛み止め、非ステロイド系抗炎症、解熱鎮痛剤(NSAIDS)の乱用
- アマルガム(銀歯)
- ステロイド(全身投与)の長期使用
- がん治療(放射線またはケモセラピー)
腸内腐敗はなぜ治すべきなのか?
なぜならば、腸の問題以外に全身にも影響を及ぼすからです。 たとえば以下の疾患です。
- 自己免疫疾患(リウマチ、甲状腺機能異常など)
- 過敏性腸症候群
- 糖尿病
- 肥満、メタボリック症候群
- アトピー性疾患、にきび、赤ら顔、慢性じんましん
- 逆流性食道炎
- ディスペプシア
- 不眠症
- 片頭痛(偏頭痛)
腸内腐敗に気づかなかった場合、上記の疾患の根本的な改善が図れないことが往々にしてある、とも言えます。
<腸内免疫を改善する方法>4R治療
腸・消化機能を改善するためには、腸の4R法という治療法を利用します。
リーキーガット、腸内腐敗、イーストシンドローム、SIBO、IBS、ディスペプシア、潰瘍性大腸炎、クローン病、慢性便秘症、逆流性食道炎、大腸憩室炎、大腸ポリープなど、さまざまな消化管の病気によいです。
最終ゴールは腸内免疫を改善することですので、免疫系の疾患対策の際も、4R法を意識します。たとえば、橋本病やリウマチなどの自己免疫疾患やガン予防の対策にも取り入れることができます。腸脳循環の仕組みも近年解明されています。腸内免疫、腸内環境のバランスが脳の病気の改善に寄与します。**1
4つのRで始める戦略で成り立ち、1から順に進めます。
Remove
Replace
Rebalance
Repair
5番目のRは上記に加え、Relaxです。
それぞれをブリーフィングしますと
⇩
1-Removeは、胃腸に不要な物質を取り除くことです。
たとえば、感染源、アレルギー、有害物質、薬剤がここに該当し、取り除くべきものです。
2-Replaceは、足りないものを補うことです。 主に胃の強酸の環境、消化酵素など、消化活動に備えておきたいものを備えるということです。
3-Rebalanceは、腸内細菌叢のバランスをとることです。
近年人間と関わる体内の微生物群、マイクロバイオーム**2~4の重要性が取りざたされるようになってきました。一人のヒトが持つマイクロバイオーム全体は100兆個の菌で構成され1−2kgものボリュームになります。
そのほとんど全てが大腸内に集中しています。90兆個強の腸内細菌を善玉菌と悪玉菌とでバランスのよい状態にします。
4-Repairは、腸の壁を修復する作業です。
リーキーガットは腸の内壁にあるタイトジャンクションという扉が破壊した状態です。腸の壁を修復して、タイトジャンクションを正常な状態に戻し、腸の壁に埋め込まれている大量の免疫細胞も復活させることができます。
5-relax 腸の組織が治るのは、心身リラックスして休息している睡眠中です。
リラックスしていると、腸の血行がよくなり細胞内のミトコンドリアが活性化し組織の治癒が進みます。ストレス過多、睡眠不足が続くと4R法を順ぐりにたどっても最大効果が得られません。
上記1Rから4Rまで患者さん毎に問題が異なりますので、どこにどのような問題があるのかを明らかにしてから治療します。
腸と脳の密接な関係、リーキーブレイン
腸は第2の脳と言われ、腸脳相関の概念もだいぶ知られるようになりました。簡潔にするため、腸と脳の重要性の根拠を2点挙げます。
1点はセロトニンという神経伝達物質のレセプターの大半は腸壁に存在するということです。
2点目はからだのなかに有害物質を入れないようにバリアの働きをする腸の粘膜に相当する、脳を外敵から守るバリア構造です。腸の粘膜構造に似た「血液脳関門という膜」が脳を覆っています。腸の問題があれば、脳に影響を及ぼします。血液脳関門の表面には腸壁の微絨毛(びじゅうもう)、細かいヒダはありません。それ以外は仕組みと構造と目的は同じです。
脳の問題があればまず腸を見直せ、とも言えます。**1 脳のバリア機能、血液脳関門がダメージを受けた状態をリーキーブレインという呼び方をすることがあります。
腸と脳は機能的に相互作用を起こすので、リーキーガットがあればリーキーブレインも起こっていることが多々あります。
**腸内免疫の治療の参考文献
- Jessica D Forbes et.al, A Fungal World:Could the Gut Mycobiome Be Involved in Neurological Disease?’ Front Microbial.2018;9:3249
- Sunil Thomas et.al. ‘The Host Microbiome Regulates and Maintains Human Health; A Primer and Perspective for Non-microbiologists’ Cancer Res. 2007 Apr15;77(8):1783-1812 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5392374/#
- Abedellatiif AM et.al. ‘Current Understanding of the role of gut dysbiosis and type 1 diabetes.’ J Diabetes 2019 Mar13 doi: 10.1111/1753-0407.12915. [Epub ahead of print]https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30864231
- Andrew.B.Shreiner ‘The gut microbiome in health and in disease’ Curr Opin gastroenterol. 2015Jan;31(1):69-75 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4290017/