体内の真菌・カビ・カンジダ菌感染が病的に増えてしまうと、全身の多岐にわたる症状をきたします。米国のWilliam Crook医師は、カビ感染と全身の不調の関係のことを、「イーストシンドローム」と呼ぶことを提唱しました。Crook医師のイーストシンドロームの著書はバイブルとして多くの患者さんを救ってきましたが、彼の著書は米国文化が前提になっていることと、情報がやや古い感が否めません。
そこで、当院は、現代人、とくにに日本の風土とライフスタイル、そして病気のトレンドを考慮した独自の治療法に進化させました。
カビ以外の有害物質(水銀、トルエン、ビスフェノールなど)やリーキーガットを併発している患者さんがCrook医師の時代よりも増えている特徴もふまえた、ウェルネスクリニック神楽坂のオリジナルの「イースト治療2.0」です。
「イースト治療2.0」
1.食事イーストシンドローム・真菌・カビ感染の治療中避ける食品
- 精製炭水化物、小麦粉、麺類、パン、スイーツなど
- 揚げ物
- マーガリンやショートニングなどのトランス脂肪酸
- 乳製品
- グルテンを含む穀物類
- ジャガイモ類
- コーヒー、カフェイン含有の清涼飲料水、ソフトドリンク
- 消化しにくい食品、遅延型食事アレルギー物質
- 人工甘味料、糖分(ショ糖、砂糖、黒糖、果糖ブドウ糖液糖、液性果糖、ブラウンシュガー、メープルシロップ、コーンシロップ)
- 発酵食品、きのこ、アルコール飲料、イースト菌
- 遅延型食事アレルギー(もし該当するならば除去)
2. 胃腸、消化機能の改善
5R法に沿って順に治します。5R法については、腸の治療のページに詳細を述べていますのでご参照ください。
2-(1)-腸内から不要な物質を取り除くこと
2-(2)-消化機能をサポートすること(消化酵素を用います)
2-(3)-腸内環境、腸内細菌叢のバランスを回復します
2-(4)-消化管の内側の壁、粘膜のヒダを修復
2-(5)-リラックス、睡眠
イーストシンドロームの治療は1から5まで順に進めていきます。自己流で試みても(1)の段階でつまづき回復が遅れる羽目になりますので、医療機関と二人三脚で行うことをお勧めします。(1)では上記の避けるべき食品リストを治療期間通して避けます。遅延型アレルギーがある場合は、同時に治療を行います。菌の感染量と患者さん毎の基礎疾患を考慮し、抗真菌薬を決定します。
(2)は、カビの菌に未消化の食品を与えないように、また、カビの菌が死滅した際の老廃物処理の目的で消化酵素を利用します。カビの菌の感染期間が長いと、腸の内腔の壁がダメージを受けて、細胞の構造が崩れています。腸内の壁が壊れ、リーキーガットという病態になったり、腸の粘膜にびっしり並んでいる腸内免疫細胞もダメージを受けます。
ここからは(3), (4)についてです。免疫低下や組織の炎症も同時に対処すると、カビ感染を克服しやすくなるため、オゾン治療や高濃度ビタミンC点滴治療を組み合わせることがあります。オゾンや高濃度ビタミンCは、組織の修復を促すだけではなく、免疫の正常化と感染症対策の効果も持ち合わせるからです。副腎疲労を併発している場合は、基本の体力をサポートするためにホルモンバランスを整えます。体内カビ感染の治療は、機能治療のような全身の機能の多角的アプローチを取り入れ実を結びます。多くのカビ感染の患者さんに出会い、抗真菌薬だけ使ったケース、投薬なしでイースト関連の食事除去法にフォーカスしたケース、腸内細菌(probiotics)だけ飲んだケース、自然療法を中心にしたケース(ココナッツオイル、オレガノ、ウバウルシ、ニンニクエキス、コロイドシルバーなど)、著明改善にはいたらないことを経験しています。カビの菌がなぜ腸内に大量に巣くってしまったかを考え、全身に影響を及ぼすカビ感染を治すために、全身的な対策を施すことが理にかなっています。
長年のカビ感染のせいで、腸内の免疫細胞を失い免疫の誤作動が起こり自己免疫疾患を発症してしまうことも少なくありません。たとえば、リウマチ、橋本病、皮膚筋炎、ループス、乾癬、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症です。自己免疫疾患の治療の基本は免疫抑制ですので、免疫抑制剤を使用すれば、ますますカビ菌が増殖しやすくなるのです。逆のパターンもあります。カビの菌が引き起こしたリーキーガットのせいで、病原体や有害物質などの異物が体内に侵入しやすくなります。このような異物がトリガーとなって自己免疫疾患を発症させる、というカビ感染が先に発症している場合もあります。カビ感染が先か、自己免疫疾患が先か、または慢性化して悪循環に陥っているのか。自己免疫疾患と、体内の慢性カビ感染はリンクするということです。実際に、自己免疫疾患がきっかけで、当院でカビ感染を治すことになる患者さまが大勢いらっしゃいます。結果的にその方たちは免疫機能が正常化し、自己免疫の抗体価が減少しています。
(5)の睡眠確保についてです。腸の細胞の回復、腸の機能の回復は、寝ている間のみ行われます。慢性の体調不良、とくに免疫低下が関与している場合、ショートスリーパーには睡眠時間を増やしていただきたいです。
3.環境対策
カビ感染の治療においては、先ず飲食物と空気の両方に気を配ります。食事と腸の機能を治し、体内のカビを増やしにくい食生活に切り替えます。また空気に関しては環境中からのカビを吸わないような工夫が必要です。
住環境、職場
- 治療を開始する際、住環境からのカビの除去をします。
- カビの発生源を見つけて処置をします。
- 部屋の湿度を50%以下に保つようにしてください。除湿、換気、太陽光も重要です。
- 過去に雨漏り床下浸水など水害にみまわれた建物など、詳細は個別にお話をうかがいます。
カビは風邪の菌を治すときのようにはいかず、長期戦でくじけそうになることもあるかもしれません。多くの方は最初の2,3週間で体調改善を自覚し治療継続のモチベーションが上がりますが、基礎疾患と体質と重症度が異なれば全員がそうなるわけではありません。この状況下で私は最短、効率性、安全性を意識し治療に従事し根治を目指しております。
当院でイーストシンドロームの診断・治療モニターに採用している検査
- 遅延型アレルギー検査
- カンジダ菌の抗体(血液)
- 便中カンジダ菌(腸内のマイクロバイオーム検査)
- 便の総合消化機能検査(CSA: comprehensive stool analysis)
- 水銀蓄積(尿)
- ホルモン(副腎その他性ホルモンなど)
- 自己免疫疾患抗体各種[]有機酸検査(尿)