- リーキーガット
- SIBO、SIFO
- 腸内腐敗
- 4R治療
リーキーガット
リーキーガットはleaky gutのカタカナ表記です。腸管がバリア機能を果たせなくなり、腸がもれもれになっている状態、腸管漏洩症候群のことです。
腸の粘膜は栄養素を吸収するときに開く扉がありますが、腸の病気があると、この扉ごと破壊されてしまいます。扉どころか、その一帯の構造が壊滅状態なので、有害物質や感染源や未消化の食品まで通常は通り抜けることができなかった大きな物体まで体内に侵入できてしまいます。
リーキーガットといえば、毒と脳の連携が重要です。腸は第2の脳と言われ、腸脳循環の概念もだいぶ知られるようになりました。腸の問題があれば、脳に影響を及ぼします。脳の問題があればまず腸を見直せ、とも言えます。**1
自分がリーキーガットかどうか疑う方法があります。 下記に簡略化しましたので参考になさってください。
リーキーガットを疑う8のサイン
当てはまるものが多いほどリーキーガットの可能性があります。
- お腹の症状 (下痢、膨満感、胃もたれ、便秘、腹痛、過敏性腸症候群、口臭、口内炎)
- アレルギ (フードアレルギー、乳糖不耐症、セリアック病、花粉症、喘息)
- 脳の症状 (頭痛、ものわすれ、頭重感、情緒不安、不眠、ADHD)
- 皮膚のトラブル (にきび、アトピー、じんましん、赤ら顔、慢性のかゆみ)
- 月経異常 (月経不順、月経痛、PMS、PCOS、子宮内膜症)
- 自己免疫疾患 (橋本病、甲状腺機能異常、リウマチ、ループス、クローン病)
- 慢性疲労、副腎疲労
- むくみ (フェイスライン、下半身)
では、なぜリーキーガットになるのか?
リーキーガットは後天性の病態です。ひとりひとりのライフスタイル、病歴、投薬歴、環境、発症の時期など千差万別ですので、個別に原因を追究します。食生活や投薬歴が関わることも多いです。
SIBO
SIBOとは small intestine bacterial overgrowthの略で、小腸細菌異常増殖症です。小腸はもともと腸内細菌が少ないところです。胃から離れるにつれ腸内細菌量が増えますので、大腸内が最も腸内細菌が多いです。 本来の小腸内の腸内細菌叢が異常になると、腹部膨満感や腹痛、下痢便秘、異常なガス発生などが起こります。小腸は胃カメラが届きにくいので、SIBOは診断がつけにくく、過敏性腸症候群と間違えられることもあります。
SIBO発症の主な原因は消化管が動きにくいこと、また消化力が弱い、または消化しにくい食品摂取です。 以下のようなリスク因子や基礎疾患があるとSIBOになりやすい、もしくは、すでにSIBOです。 該当するものがありますか?
- 胃酸を抑える薬を飲んでいる。
- ステロイド、抗生物質、ピルいずれかを長期間飲んだことがある。
- 遅延型フードアレルギーがある。
- 食事アレルギー、とくにヒスタミン食品に対して。
- 小麦をよく摂る。
- リーキーガットがある。
- 過敏性腸症候群がある。または疑い。
- 酒さ、赤ら顔、アトピー、慢性じんましん。
- 慢性疲労症候群、線維筋痛症
- 糖尿病
- 皮膚筋炎
- クローン病、潰瘍性大腸炎
- 大腸憩室
- 橋本病、甲状腺機能低下症、そのほかの自己免疫疾患
- パーキンソン病
- うつ病
- 不眠症
SIFO
ウェルネスクリニック神楽坂では、SIBOと名前が似た、SIFOの診断と治療も行います。
SIFOは小腸内にカビの菌(カンジダ菌)が異常増殖した病的な状態です。 small intestine fungal overgrowthを略してSIFO、訳すと小腸真菌異常増殖症です。
下痢、便秘、腹痛、腹部膨満感、食後の眠気、胃もたれなど様々な胃腸の症状が起こります。SIBO(小腸細菌異常増殖症)、IBS(過敏性腸症候群)、dysbiosis(腸内細菌叢のバランスが崩れた状態、腸内腐敗)、IBD(炎症性腸疾患)、機能性ディスペプシア(胃カメラでは異常が見つからない機能的な消化不良)に合併していることがあります。
消化器以外にも全身の不調に関係することも多いことが特徴です。慢性疲労、めまい、頭痛、不眠、アレルギー、じんましん、自己免疫疾患、甲状腺機能低下症などが一例です。
腸内腐敗
腸内腐敗とは、小腸細菌異常増殖症とはまた違う病態で、主に大腸内の問題を指します。 大腸内には100兆個近くの腸内細菌が存在しています。善玉菌と悪玉菌とが一定のバランスを保って腸内細菌叢を構成します。バランスのとれた腸内細菌叢のおかげで、腸内では消化機能を助けたり、腸内免疫を維持しているのですが、絶妙なバランスが崩れ悪玉菌が優勢になってしまい腸内に文字通り腐ったガスが大量に発生した状態が「腸内腐敗」です。 腸内腐敗に陥る原因は上記のSIBOのリスク因子と同じです。さらにいくつかのリスク因子があります。
- 暴飲暴食
- 抗生物質の摂りすぎ
- 抗生物質使用の食肉の食べ過ぎ
- 痛み止め、NSAIDSの摂りすぎ
- アマルガム(銀歯)
- ステロイド(全身投与)の長期使用
- がん治療(放射線またはケモセラピー)
腸内腐敗はなぜ治すべきなのか?
なぜならば、腸の問題以外に全身にも影響を及ぼすからです。 たとえば、腸内腐敗がベースにあるせいで、以下のような病気を起こしやすくなります。 これらは一例です。
- 自己免疫疾患(リウマチなど)
- 過敏性腸症候群
- 糖尿病
- 肥満、メタボリック症候群
- アトピー性疾患、にきび、赤ら顔、慢性じんましん
- 逆流性食道炎
- ディスペプシア
- 不眠症
- 偏頭痛
腸内腐敗に気づかなかったり、軽視して手つかずのままにすると、上記の疾患の持続的な改善がないということもいえます。
<腸内免疫を改善する方法>4R治療
腸・消化機能を改善するためには、腸の4R法という治療法を利用します。
リーキーガット、腸内腐敗、イーストシンドローム、SIBO、IBS、ディスペプシア、潰瘍性大腸炎、クローン病、慢性便秘症、逆流性食道炎、大腸憩室炎、大腸ポリープなど、さまざまな消化管の病気によいです。
最終ゴールは腸内免疫を改善することですので、免疫系の疾患対策の際も、4R法を意識します。たとえば、橋本病やリウマチなどの自己免疫疾患やガン予防の対策にも取り入れることができます。腸脳循環の仕組みも近年解明されています。腸内免疫、腸内環境のバランスが脳の病気の改善に寄与します。**1
4つのRで始める戦略で成り立ち、1から順に進めます。 RemoveReplaceRebalanceRepair5番目のRは上記に加え、Relaxです。
それぞれをブリーフィングしますと
⇩
1-Removeは、胃腸に不要な物質を取り除くことです。 たとえば、感染源、アレルギー、有害物質、薬剤がここに該当し、取り除くべきものです。
2-Replaceは、足りないものを補うことです。 主に胃の強酸の環境、消化酵素など、消化活動に備えておきたいものを備えるということです。
3-Rebalanceは、腸内細菌叢のバランスをとることです。近年人間と関わる体内の微生物群、マイクロバイオーム**2~4の重要性が取りざたされるようになってきました。一人のヒトが持つマイクロバイオーム全体は100兆個の菌で構成され1−2kgものボリュームになります。そのほとんど全てが大腸内に集中しています。90兆個強の腸内細菌を善玉菌と悪玉菌とでバランスのよい状態にします。
4-Repairは、腸の壁を修復する作業です。リーキーガットは腸の内壁にあるタイトジャンクションという扉が破壊した状態です。腸の壁を修復して、タイトジャンクションを正常な状態に戻し、腸の壁に埋め込まれている大量の免疫細胞も復活させることができます。
5-relax 腸の組織が治るのは、心身リラックスして休息している睡眠中です。リラックスしていると、腸の血行がよくなり細胞内のミトコンドリアが活性化し組織の治癒が進みます。ストレス過多、睡眠不足が続くと4R法を順ぐりにたどっても最大効果が得られません。
上記1Rから4Rまで患者さん毎に問題が異なりますので、どこにどのような問題があるのかを紐解いてから治療します。
**腸内免疫の治療の参考文献
- Jessica D Forbes et.al, A Fungal World:Could the Gut Mycobiome Be Involved in Neurological Disease?’ Front Microbial.2018;9:3249
- Sunil Thomas et.al. ‘The Host Microbiome Regulates and Maintains Human Health; A Primer and Perspective for Non-microbiologists’ Cancer Res. 2007 Apr15;77(8):1783-1812 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5392374/#
- Abedellatiif AM et.al. ‘Current Understanding of the role of gut dysbiosis and type 1 diabetes.’ J Diabetes 2019 Mar13 doi: 10.1111/1753-0407.12915. [Epub ahead of print]https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30864231
- Andrew.B.Shreiner ‘The gut microbiome in health and in disease’ Curr Opin gastroenterol. 2015Jan;31(1):69-75 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4290017/