マスト細胞活性化症候群 MCAS
MCAS マスト細胞はからだを守る免疫系のとても重要な細胞です。マスト細胞は免疫の最前線で働きます。イメージとしては細胞内に常駐しているセキュリティガードです。脳、粘膜、皮膚、気管支、腸、血管、血小板、リンパなど全身にわたって外部との境界になる箇所や自分の組織や臓器を守る必要があるところにマスト細胞が存在します。何らかの異物が体に侵入しようとするとマスト細胞が作動します。マスト細胞が異常に活性化された時に起こるさまざまな身体の症状を総称してMCAS(エムキャス)と言います。MCASはmast cell activated syndromeの略で、マスト細胞活性化症候群です。
2007年以降にMCASという病態が知られるようになりました。まだ新しい知見ですが、この数年で発症数が増えています。また、重症なケースも増えている傾向にあります。
MCASは症状の起こる部位の違いから頻度の違い、マスト細胞を活性化するトリガーの違い、重症度の違いなど個人差があります。マスト細胞の各部位の分布数やマスト細胞のなかの顆粒数が人それぞれ異なります。MCASが起こりやすいかどうかは基礎疾患やトリガーによって現れる症状が異なります。マスト細胞のトリガーの候補は多岐に渡ります。発症時の環境の差、個人差もあります。
まずはMCASの主役、マスト細胞について説明します。
マスト細胞は体中に分布しています。特にマスト細胞が多いのは、外部の異物と接触する面です。前述したように、皮膚、粘膜、血管など各細胞のガードマンです。粘膜であれば気道、口腔内、消化管、目、脳も含みます。目、鼻、腱や関節、靭帯、骨にも多く分布しています。脳の防御は重要です。そのため脳を異物から守る血液脳関門というバリア上にもマスト細胞が大量にそろっています。血管は、血管から体内に敵を侵入させないように、血管内皮細胞という血管の内側の壁が防波堤の役割を持ちます。ですから、血管壁の細胞にもマスト細胞が大量に存在します。また、血小板にもマスト細胞が多く見られます。
マスト細胞は日本語では肥満細胞といいます。マスト細胞が数百種類の顆粒を細胞内に有し、顕微鏡下ではまるまる太って見える細胞なので肥満細胞と名付けられました。実際の肥満症とは関係ありません。ここではMCASのMがマスト細胞と連想しやすいのでマスト細胞と統一しています。
マスト細胞の作用について
マスト細胞は異物侵入に気づくや否や、まずアラートを出します。マスト細胞の中の手持ちのさまざまな生理活性物質を一気に放出します。これをマスト細胞が脱顆粒するといいます。これらの顆粒のよく知られた代表的な物質がヒスタミンです。マスト細胞が放出する顆粒は他にもプロスタグランジン、ロイコトリエン、サイトカインなどそれぞれの顆粒が自分の系列の仲間や、横のつながりで他の部位の免疫系の仲間に情報を伝達します。白血球が病原菌と戦いやすいように、白血球が戦う現場に移動しやすいように(白血球の遊走のこと)血管を広げたり、血小板に集合をかけて血が固まりやすくなるようにしたり、炎症の境界域を作ろうとしいたりします。これは正常なからだのはたらきです。しかし、もしマスト細胞が異常活性してしまうと、MCASという病態になります。MCASの進行がときに山火事のように燃え広がるのがとても早いことがあります。トリガー、環境条件、または基礎疾患(MCASを発症しやすい元々の疾患にかかっている場合)によっては重篤な経過をたどることがあります。
例えば口から入り、口腔内の違和感や灼熱感、頭痛、ブレインフォグだけだったのに、半日程度で咳、吐き気や下痢が始まることがあります。引き続いて皮膚の痒みや湿疹に至ることもあります。からだの痛みを伴ったり、発熱することもあります。
MCASのさまざまな症状
疲労感、線維筋痛症、失神、意識を失いそうになる感覚、頭痛、かゆみ、じんましん、手足のしびれ、吐き気、嘔吐、腹痛、目の違和感、移動性の浮腫、寒気、息苦しさ、呼吸困難、のどの痛み、のどの違和感、認知機能低下、胃食道逆流、不整脈、動悸、発汗、発熱、嚥下障害、下痢と便秘を繰り返す、下痢、胸痛、不眠、口内炎、口腔粘膜のただれ、リンパの腫れ、出血しやすくなる、あざができやすくなる、排尿異常、視覚異常
蕁麻疹、皮膚の腫れ、紅潮、かゆみ、発疹、物理的な刺激によるミミズ腫れ、慢性のかゆみ、斑点、あざ、斑状の赤い発疹、赤ら顔、真菌様皮膚炎、扁平苔癬、傷が治りにくくなる、
頭痛、めまい、目の渇き、痛み、腹痛、血圧低下、動悸、浮腫、呼吸困難、咳、くりかえす蕁麻疹、皮膚炎症、かゆみ、肌荒れ、発汗、発熱、不眠、不安、骨や関節の痛み、口の痛みその他粘膜刺激症状、疲労、倦怠感が抜けない、全身の不調持続、食品への過敏症、ADHD症状、吐き気、下痢、過敏性腸症候群、電磁波過敏など。
マスト細胞の脱顆粒後は、生理的現象を逸脱したMCASのケースであれば進行を抑制する必要があります。数百種もの生理活性物質が一気に脱顆粒することは、炎症性です。侵入者を囲い込んで体を防御しようとする大義名分が強烈すぎると体にダメージを与えるからです。
くりかえすMCASについて
MCASは、再発しやすいです。MCASを繰り返しやすい理由は1にトリガー、2に基礎疾患です。つまり、トリガーに日常的に接触している場合、トリガーに気づく、気づかざるかかわらずですが、概ね後者です。基礎疾患とはMCASを誘引しやすい因子をすでに抱えている場合、基礎疾患のようなベースにある因子です。MCASだと医師が判断できれば、応急処置でMCASを抑えることができます。けれどもその後繰り返したり、再発することがよくあります。くり返してしまう原因を見つけることはとても重要です。慢性化MCASや再発性MCASは根本治療を要します。
SIBOや過敏性腸症候群の例
中程度MCASであれば原因不明の慢性的な体調不良とされていることがあります。例えば過敏性腸症候群のように下痢、便秘を繰り返したり、突然の腹痛をもよおすケースです。過敏性腸症候群は明らかな原因がなくストレスが関連すると言われます。過敏性腸症候群が必ずしもストレスだけのせいとは限らないことがあります。ほかには慢性疲労症候群、線維筋痛症、化学物質過敏症もMCASが関与していることがあります。
SIBOという小腸細菌異常増殖症という病気もMCASが関わります。MCASのうち4割はSIBOが原因だという研究報告もあります*。 SIBOの原因菌の種類次第です。(*Covid19によってこのデータは変わるかもしれません。コロナウイルスもMCAS発症に関与するからです。) SIBOの突然の発作的な症状はMCAS絡みです。ライム病感染、カビ感染、マイコプラズマ感染もMCASを起こしやすいことが知られています。腸内細菌叢のアンバランスももちろん関係があります。マスト細胞は腸管粘膜に大量に存在しますので、腸内の特定の病原菌が病的に繁殖してしまったときにMCASのトリガーとなることが知られています。たとえば、カンジダ、緑膿菌、モルガネラ菌、大腸菌、クラブシエラニューモニア、シトロバクターフレンジー、エンテロコッカスフィーカリス、プロテウスミクロビリなどです。その他、サルモネラ、リステリア、ツラレミア、化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ピロリ菌、一部の寄生虫もMCAS発症に関与します。
線維筋痛症、慢性疲労症候群、化学物質過敏症もMCASの病態になっていることがあります。ライム病やカビなど隠れた慢性の感染症がMCASの基礎疾患として存在していることが少なくありません。また、有害金属の毒性、例えば水銀中毒、アルミニウム中毒、鉛中毒などがMCAS発症のリスクを高めていることもあります。
当院ではMCASの診断と治療を行ないます。MCASを克服するためのトリガーと基礎疾患の解明と根本治療も行います。
参考文献
TThor DC, Suarez S. Corona With Lyme: A Long COVID Case Study. Cureus. 2023 Mar 24;15(3):e36624.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10122830
ライム病を基礎疾患に持つ患者さんがコロナ後遺症になり、コロナ後遺症のための様々な治療の試みも全て無効。難治性のコロナ後遺症の原因にライム病の関与及び 脳の炎症の作用機序はMCAS(マスト細胞活性化症候群)が関与し症状が複雑化しているという内容の症例報告。
Afrin LB, Weinstock LB, Molderings GJ. Covid-19 hyperinflammation and post-Covid-19 illness may be rooted in mast cell activation syndrome. Int J Infect Dis. 2020 Nov;100:327-332.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7529115
MCAS(マスト細胞活性化症候群)は炎症とアレルギーの反応をベースにした身体の多機能不全と知られている。コロナのウイルス(SARS -CoV2)がそのトリガーになりマスト細胞を活性化し、さらにコロナ後遺症にもMCASの作用機序が関与することを議論している論文。
Shaik Y, Caraffa A, Ronconi G, Lessiani G, Conti P. Impact of polyphenols on mast cells with special emphasis on the effect of quercetin and luteolin. Cent Eur J Immunol. 2018;43(4):476-481.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6384425
ポリフェノールのケルセチンとルテオリンがMCAS(マスト細胞活性化症候群)の症状軽減に効く作用機序をまとめた論文。
MCAS(マスト細胞活性化症候群)のよくある質問
Q1. MCASとは何ですか?
MCASは、マスト細胞という免疫細胞が必要以上に過剰に活性化し、ヒスタミンなどの生理活性物質を細胞内から放出して、全身にさまざまな症状を起こす状態です。皮膚、気道、腸、血管、脳など幅広い部位に影響します。
Q2. マスト細胞とは何ですか?
マスト細胞は、体の中で外敵や異物を見張る“警備員”のような免疫細胞です。皮膚、粘膜、血管、腸、気道、脳のバリア周辺などに多く存在し、異常を感知するとヒスタミンなどの物質を放出します。
Q3. MCASではどんな症状が出ますか?
症状は人によってかなり異なります。かゆみ、じんましん、赤み、腹痛、膨満感、便秘、身体のむくみ、下痢、吐き気、息苦しさ、動悸、頭痛、めまい、耳鳴り、不眠、パニック、ブレインフォグ、疲労感、皮膚が焼けるような感覚、チクチクする、ホルモン異常(慢性化すると、多嚢胞性卵巣症候群、無排卵、不妊、月経異常)など、皮膚・腸・呼吸器・神経・循環器にまたがって起こることがあります。
Q4. MCASはアレルギーと同じですか?
似ている部分はありますが、同じではありません。アレルギーは特定の抗原に対する限定的な免疫反応です。いっぽう、MCASはより広く、さまざまな物質に対してマスト細胞が過剰に反応する状態です。じんましんだけでなく、頭痛、腹痛、お腹の膨満感、動悸、脱力感、体の痛み、ブレインフォグなど全身症状を伴うことがあります。
Q5. MCASが起こるきっかけは何ですか?
(同じ意味の質問として:マスト細胞は何に対して反応していますか?)
食品、添加物、温度変化、ストレス、感染症、腸内の腐敗菌が出す毒素、カビ、化学物質、粉塵、電磁波、一部の薬剤など、ささいと思われる因子がトリガーになることがあります。人によって反応するものが異なり、複数の要因が重なって発症することもあります。
Q6. なぜマスト細胞が過剰な反応するのですか?
マスト細胞が単独で勝手に暴走するというより、その背景に慢性の持続的な炎症や感染症、カビ毒、腸内環境の乱れ、遅延性食物アレルギー、リーキーガット、リーキーブレイン、有害物質の中毒、基礎疾患(例えばエーラスダンロス症候群や自己免疫疾患)、さらに最近ではコロナ後遺症などがあって、免疫が過敏な状態になっているということがあります。つまり、MCASは突然かかってしまう病態ではなく、隠れた原因があり、時間の経過とともに身体の免疫サポートが弱くなり結果的に発症しているものです。
Q7. MCASの症状は突然起こりますか?
はい。MCASの反応は発作的で、急に始まることがあります。食べ物に反応する方の場合は、食事の度に突然の腹痛や膨満感が起こり、過敏性腸症候群と診断されてしまっていることもあります。外出して大気汚染だけで動悸やブレインフォグや頭痛が起こる方は粉塵がきっかけのMCASのことがあります。最初は口やのどの違和感、頭痛、腹痛、吐き気程度でも、短時間で全身に反応が広がることがあります。症状の出方が予測しづらいことがよくあります。
Q8. 頭痛やブレインフォグ、不安感もMCASと関係ありますか?
はい。マスト細胞は脳のバリアや大脳辺縁系の周辺にも多く存在します。そこが刺激されると、頭痛、集中力低下、ブレインフォグ、不眠、気分の不安定さ、自律神経の乱れなどが起こることがあります。元々の基礎疾患が脳に関連しているとMCASの脳に関わる症状が如実に現れることがあります。基礎疾患の例は、リーキーブレイン、神経ボレリア症、カンジダ感染、脳挫傷などの過去の外傷、およびコロナ後遺症などです。
Q9. 腸の症状やSIBO/SIFOとMCASは関係ありますか?
はい。腸の炎症、腸内細菌の乱れ、SIBOやSIFO、リーキーガットがあると、マスト細胞が刺激されやすくなります。MCASの方で腹痛、吐き気、下痢、便秘、膨満感がある場合、胃腸の機能や腸内環境や消化力を確認して評価することはとても大切です。
Q10. 部屋のカビやカビ毒はMCASに関係しますか?
はい。環境カビやカビ毒は、気道・腸・脳のバリアにダメージを与え、免疫を過敏にしやすくします。その結果、MCASが起こりやすくなったり、治療しても再発しやすくなったりします。住環境の見直しが必要になることもあります。
Q11. ライム病やバベシアなどの慢性感染症とMCASは関係ありますか?
関係します。慢性感染は免疫を持続的に刺激し、神経炎症や自律神経の乱れを通してMCASを悪化させることがあります。MCASだけに注目しても改善しにくい場合、背景に感染症が隠れていないかを検討することがあります。
Q12. コロナ後遺症やヒスタミン不耐性とMCASはつながりますか?
はい。コロナ後遺症の一部は、MCASの仕組みで説明できることがあります。また、ヒスタミンを多く含む食品で悪化しやすい方では、マスト細胞の過敏な反応が関わっている可能性があります。ただし、食事だけで説明できない背景因子があることも多いです。
Q13. MCASは血液検査でわかりますか?
必ずしもそうではありません。MCASは発作的な現象なので、血液検査でタイミングよくスパイク的なヒスタミンの異常反応を捉えるのが難しいです。ウェルネスクリニック神楽坂では、症状の出方、トリガー、背景因子、治療への反応などを合わせて臨床的に判断することを重視します。
Q14. クリニックではどのようにMCASを考えますか?
クリニックでは、単にヒスタミンを抑えるだけでなく、なぜマスト細胞が過敏になっているのかという背景を重視します。腸内環境、感染、カビ、化学物質、有害物質、生活環境、基礎疾患などを全体で見て、原因因子を整理しながら段階的に治療方針を組み立てます。抗ヒスタミン剤を服用したり、ヒスタミンを多く含む食材を避ける方法は一定の効果を得られますが、一時的な対症療法です。
Q15. MCASは良くなりますか?
はい。大切なのは、症状を一時的に抑えるだけでなく、マスト細胞が異常反応せざるを得ない背景を解明し、免疫細胞の働く場である粘膜を補修することです。根本治療で改善します。
Q16. どんな症状があるとMCASを疑いますか?
皮膚のかゆみやじんましんだけでなく、食後の眠気や腹痛、下痢、吐き気、動悸、息苦しさ、慢性の痰、頭痛、めまい、ブレインフォグ、不眠、不安感、慢性疲労、慢性の身体の疼痛、関節痛、発熱など、複数の臓器にまたがる症状が出る場合はMCASが関係していることがあります。症状が一つではなく、皮膚・腸・神経・循環器などにまたがっていることが多いです。一般の検査で異常値が出ないため、精神科の疾患と誤診されることがあります。しかし、もしご自身がMCASにかかっているのかもしれないと疑ったときはご相談ください。
Q17. 原因不明の動悸や息苦しさもMCASと関係ありますか?
はい。マスト細胞が放出するヒスタミンなどの物質は、血管や気道、自律神経にも影響します。そのため、検査では大きな異常がないのに動悸、胸の違和感、息苦しさ、のどの閉塞感のような症状が出ることがあります。
Q18. 食後に眠くなる、動悸がする、頭がぼーっとするのはMCASでしょうか?
可能性はあります。食事がトリガーになってマスト細胞が反応すると、ヒスタミン反応や腸の炎症を介して、眠気、動悸、ブレインフォグ、だるさなどが出ることがあります。しかし、他の原因やMCASと合併している複合的な因子によることもありますので、必ずしも食後の眠気、動悸、頭がぼーっとする現象がMCASのせいだとは断定できません。
Q19. 化学物質過敏症(CS)や電磁波過敏症(EHS)の症状とMCASは関係しますか?
はい。MCASの方は、匂い、化学物質、空気環境、刺激などに過敏に反応しやすく、CSやEHSと似た症状を起こすことがあります。近年の研究では電磁波暴露の際は、神経過敏の増幅のメカニズムにマスト細胞が関与していると結論づけています。肥満細胞が脳(中枢)と抹消で過剰反応を起こし、ヒスタミン、トリプターゼ、サイトカイン放出が皮膚、気管支、神経、消化器など多系統に渡って起こります。さらに、脳や腸のタイトジャンクションという身体の構造にも影響を受けます。CSやEHSの症状としては神経過敏な症状が優勢ですが、MCASのように免疫細胞の異常が病態生理として指摘されています。MCASの発作中に生理活性物質を測ることが困難なため、ここに記載したことは現在研究レベルの考察です。
Q20. SIBOやSIFOの症状とMCASは重なりますか?
はい。腹部膨満感、下痢、便秘、吐き気、食後不調、ブレインフォグ、疲労感などはSIBO/SIFOとMCASの両方で見られることがあります。腸の炎症や腸内環境の乱れがマスト細胞を刺激するため、両方が同時に関わっていることも珍しくありません。
Q21.アレルギー検査が陰性でもMCASはありえますか?
はい。MCASは一般のアレルギー検査だけでは見つかりません。アレルギー検査とは医療機関で保険適応内のIgE抗体の即時型反応のアレルギーを指しているかと思います。特定のIgEアレルギーがあることがMCASの診断基準ではありません。マスト細胞やその他の炎症性生理活性物質が何らかの物質に過敏に反応していれば症状は起こります。これらの反応はダイナミックで、スパイク的に増加するので、検査で数字を追うのは困難です。検査結果によってMCASの可能性を否定せず、症状の出方や背景を合わせて考えましょう。
Q22. 抗ヒスタミン剤で治りますか?
抗ヒスタミン剤で症状が軽くなることはありますが、それだけで根本的に治るとは限りません。そもそもヒスタミンだけが産生される病態ではありません。ヒスタミンはマスト細胞の保有する顆粒の中の一部です。MCASの発作では他の炎症性物質もドミノ倒し的にダイナミックな反応を起こしているので、ヒスタミンだけ抑えても効果は限定的です。すべての免疫細胞を抑えることができるステロイドという薬がありますが、こちらはMCASには勧められません。ステロイドは強い免疫抑制剤です。原因の一部にステロイドのせいで逆に病態が悪化するものもあります。抗ヒスタミンと違う点は、ステロイドは長期服用で後遺症をもたらす可能性がある点です。
Q23. 市販の抗アレルギー薬が効いたらMCASと考えてよいですか?
ヒスタミン系の症状が関与しているというヒントにはなります。もちろん、症状のパターンと背景を総合的に見る必要があります。
Q24. MCASにサプリメントは役立ちますか?
役立つことはありますが、抗ヒスタミン剤がマイルドかつ広範囲に生理活性物質を抑える程度、という位置付けです。ビタミンC、ケルセチン、DAO、マグネシウムなどが話題になることがありますが、MCASの方は添加物やサプリメントのカプセルにさえ反応することがあり、自己判断で試すと悪化することもあります。慎重な調整が大切です。
Q25. サプリや薬でかえって具合が悪くなるのはMCASと関係ありますか?
関係することがあります。MCASの方は成分そのものだけでなく、添加物、カプセル素材、製造過程の違いなどにも反応することがあります。「体に良いはずのもの」で調子が悪くなる場合、マスト細胞の過敏性が関わっていることがあります。または、原因因子をないがしろにしたサプリメントの選び方のせいかもしれません。つまり治療方針が的確ではないのかもしれません。サプリメントよりも重要なことを見落としていることが考えられます。
Q26. MCASがあると、何科に相談すればよいですか?
症状によって受診先は変わりますが、皮膚科、アレルギー科、消化器内科、呼吸器内科、心療内科などに分かれて受診している方も少なくありません。ただしMCASは全身性の問題なので、臓器別に見ても全体像がつかみにくいことがあります。複数症状が重なっている場合は、背景を含めて総合的に診る医療機関が良いです。
Q27. 原因不明の不安感、うつ症状、パニック、気分の変調(mood swing)、睡眠障害、記憶力低下、集中力低下、意欲低下、学習力低下はMCASと関係しますか?
はい。ヒスタミンやその他の炎症性物質は脳や自律神経に影響します。不安感、焦燥感、寝つきの悪さ、中途覚醒、ブレインフォグ、学習力低下などが起こることがあります。精神的な問題だけでなく、体の炎症や免疫の過敏性が背景にある場合もあります。
Q28. 「いろいろな症状があるのに検査は正常」と言われます。MCASの可能性はありますか?
はい、そのようなケースでMCASが背景にあることがあります。MCASは症状がまちまちで、発作的で、通常の検査では異常が出にくいことがあります。皮膚、腸、呼吸、神経、循環器にまたがる症状がある場合は、免疫の過敏性という視点も必要です。
Q29. 匂い、食べ物、気温、ストレスなどで毎回違う症状が出るのはなぜですか?
MCASでは、トリガーが一つに限らず、その日の体調や炎症の程度によって反応の出方が変わることがあります。過敏な反応の閾値が下がっているため、今生じた症状と先ほど生じた症状の刺激物質が同じとは限らず、ありとあらゆる異物に反応しているとしたら、1日の時間帯の違いでも反応は異なります。例えば、自分と異なる電磁波スペクトルが苦手な場合、朝の強い紫外線に反応し、昼間は自宅の食卓の何らかの物質に反応し、外出した時には粉塵やすれ違った人の香りに反応したかもしれないし、夜の自宅のLED照明の波長がトリガーになるかもしれません。トリガーや状況が異なれば症状も異なります。ある日は腹痛、全身疼痛、ある日は頭痛や動悸、別の日は皮膚症状というように、症状が一定しないことも珍しくありません。
Q30. MCASかもしれない場合、クリニックではどのように考えますか?
クリニックでは、症状を抑えることだけでなく、マスト細胞の暴走を許してしまう背景因子を判明させます。免疫反応がテーマであるので、免疫細胞の働く場である、血管内皮細胞の構造や粘膜バリアの構造を確認し、再生や修復の必要性を判断します。腸内環境、SIBO/SIFO、ウイルス関与、その他の慢性感染の病原体、カビ、化学物質の毒性、ホルモンバランス、慢性炎症、環境因子などを大局的に診ます。
参考文献
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